第20章 持つべきものは高尾
夜9時。
夕食とミーティングを終えたオレと高尾は風呂に入っていた。
「だっはー生き返るわー。それより黒子、マジで普通のプレーはからっきしだな。ミスディレクションなんて反則技持ってんのに。・・・つーかミスディレクション抜くとき使えばいいじゃん」
「バカめ。本気で言ってるのか?」
ムッとしたバカな高尾にも分かるように、ミスディレクションの原理を教える。
「その弱点を克服する方法があるとしたら、恐ろしい進化を遂げるかもしれん」
「それは良いけど、さっきから喋ってる相手、それライオン。真ちゃんすんげぇ目悪ぃんだな」
高尾がどれだけオレの話を理解したかは謎だが、湯船に浸かりながら話を続ける。
「そんなことより山田にいつ告んの?」
「ま、まだ決めていないのだよ」
急に歯切りが悪くなったオレに追い討ちをかけるように高尾は口を開く。
「早くしねぇと、誰かに取られちゃうぞー」
「・・・・・。」
「誠凛の木吉とか。」
その一言で体育館の出来事が一瞬にして脳裏に蘇る。そして再びオレのやきもきとした気持ちが暴れだす。
くそ、高尾のくせに・・・。
そう思ったものの言い返せる訳もなく、いつもの不敵な笑みを浮かべた高尾はそのまま風呂を出た。
後を追うようにしてオレも風呂から上がり、部屋に向かう。この合宿中、オレと高尾は同部屋で隣は花子のいる部屋だった。
部屋の扉が見えたとき、その前で枕とタオルケットを抱えてる花子が視界に入ってきた。
『あっ、やっと戻ってきた』
「オマ、何してんだ?」
先に突っ込んだのは高尾だった。花子は高尾のせいだからね、と前置きをしてから話だす。
『いやーほんとに怖くて怖くて。だから、・・・・・一緒に寝よ?』