第33章 赤司が大きくなったんだよ
「花子、オマエ左足は大丈夫か?」
『なっ、なんで。』
「オレが何も気付いていないとでも思ったか?」
正直に言えば最初に気付いたのは緑間だけどな、と赤司は付け足した。
まさか2人に左足を痛めていたことを見抜かれたのには驚いた。というのも、確かに3Qの後半あたりから踵がとても痛かったのは事実だ。
しかし私はベンチに下げられることなく4Qまでフルで試合に出ていたのだ。
ということは、だ。
足を痛めていたことをあの鬼のように怖い監督の前では欺けたということになる。
それを2人は見抜いたというのだから、さすがとしか言い様がなかったし、ここへきてウソなどは到底つけなかった。
「いつから痛めてたんだ?」
『実はね・・・、』
本当は話したくなどなかったが、渋々バッシュの中に画びょうが入っていたこと、前々からTシャツを隠されていたこと全てを話した。
「悪い、Tシャツの件はなんとなく気付いていたんだ。オレたちも。」
『そうだよね。毎回忘れたなんて通用しないかなとは思ってたんだけど。』
「力になれなくてすまない。でもこれからは」
『もういいのっ。』
赤司が話終わらないうちに少し大きな声で、それを遮る。
『別に気にしてないよ、そんな卑怯な嫌がらせ。』
・・・ウソだ。
さすがに今日は心が折れそうだったじゃないか。
『最後外したのは私の練習不足だよ。』
・・・思ってないくせに。
あの画びょうがなかったらって何度も思ったじゃないか。
『負けて学ぶことだってあるしね。』
・・・バカじゃない?
負けて残ったのは言い表せないくらいの負の感情だけだったじゃないか。
「花子、」
『大丈夫だって。』
心配そうにこちらを見る赤司がそっと右手を私の左頬に添えた。
「じゃあ、どうして泣いているんだ?」