第33章 赤司が大きくなったんだよ
「大丈夫か?怪我とかしてないか?」
『・・・大丈夫。真ちゃんは?』
「必死にオマエを探している。」
赤司は走って私を探してくれたのだろう。汗ばんだ身体に、上がっている息。
無事で良かったと、抱きとめる腕は苦しいくらいにきつかった。
赤司の優しい声が耳元で囁く。
「頼むから電話くらいは出てくれ。・・・すごく心配したんだ。」
『ごめんなさい。』
伏し目がちに謝ると赤司は抱きしめていた腕を解き、冗談交じりに笑った。
「まぁ、緑間のが心配しているだろうがな。」
そのあと赤司は真ちゃんに連絡を入れると、不思議そうに私の顔を覗き込んだ。
「泣いていたわけじゃないのか?」
『泣いてないよ。』
「なんだ、てっきり泣きたくてここに来たのかと思っていたが違ったみたいだな。」
赤司はおかしいな、と首を捻った。
赤司の言っていることは正解だった。泣きたくてここを選んで来たのだ。
試合に負けたのが悔しくて泣きたかったのか、絶対外れないと思っていたシュートが外れて泣きたかったのか、はたまた同じチームに嫌がらせをする犯人がいると分かり絶望して泣きたくなったのか、とにかくすごく泣きたい気分だった。
それなのに、私は泣くどころか一滴の涙も零すことができなかった。