第33章 赤司が大きくなったんだよ
「もしも」
「赤司っ、今花子と一緒にいるか?」
「いや、いない。部屋に1人でいるが、どうしたんだ?・・・もしかして花子、まだ帰ってきていないのか?」
夜8時。
電話の向こうで、緑間の慌てた姿が目に浮かぶ。
今日の試合、オレたち男子は照栄中に勝ち優勝した。しかし女子は2点差で負け準優勝に終わった。
花子は試合に出ずっぱりでいつも通り全力で試合をしていた。全ての試合を見てきたわけではないが、緑間同様花子のシュートは外れない。
・・・はずだった。
しかし残り2秒で花子にパスが渡り、決まれば逆転。そんなシチュエーションで放った3Pは、奇しくもリングに嫌れたのだった。
最後の大会だった3年生たちが泣いたり、負けに悔しむ1軍のメンバーの中、花子はただ一人最後に3Pを放った場所から動くことなく立ちすくんでいた。その目に涙はなかった。
すぐにでも声をかけに行きたかったが、自分たちにも試合があり、オレが今日花子を見たのはそれが最後だった。
「何度インターホンを押しても出てこないから、母さんに合鍵借りて入ってみたら家にいないんだ。」
「オレは学校の方面探しに行く。緑間は公園の方を頼む。」
電話を切り、携帯を片手にオレは家を飛び出した。