第33章 赤司が大きくなったんだよ
『ありがとうございました。』
一通り手当てが終わると彼は優しく笑った。
「まだ痛むかな?この後試合出来そう?」
『・・・・・。』
「オレのクラスにさ、帝光中にすっごい1年がいるって山田さんのこと話す女子がいてさ、」
左足もバッシュを履いてトントンと踵で床を蹴る。
痛くない。
と、言えばウソになるが時間もたち、だいぶ痛みも落ち着いてきていた。
背の高い彼は、バッシュに入っていた画びょうを小さな袋に入れながら優しく話しを続けていた。
「毎日毎日、耳にタコができるほど話聞かされてさ。だから今日プレー見るの、実はすごい楽しみにしてたんだよね。」
ニコリと笑う彼とは初対面なはずなのに、投げやりになっている心の中全てを読まれているような気がした。
そして彼は、俯く私の頭に優しく手を置いた。
「楽しんでいこーぜ。」
そう言い残して去って行った彼が誰なのか、このときはまだ知らなかった。