第3章 電光石火
次の日…
三蔵は目を覚まさない。
『やるしかないか…師匠…言いつけ破ります。』
衣月はそう言うと肩に掛かっていた経文を巻物の姿に戻すと三蔵の体の上に広げた。
『まさか…!衣月…それだけはダメです!』
里白が気づいて衣月を止めた。
『何をしようとしてんだ??』
里白の声に目を覚ました悟浄がその光景を見て言った。
『有天経文は「生」と「在」を司ります。その力は蘇生、回復なんです。有天経文の守り人は人の命の光が見えるんですよ。衣月は三蔵の命の光が消えかかっているのが見えたから…蘇生をしようとしてるんです。それは衣月の師匠から固く禁じられていて代々の有天経文の守り人も守ってきた掟なんです。』
悟浄の問いに里白がこたえた。
『破ったらどうなっちまうんだ?』
悟浄が焦った様子で言った。
『それは私にも分かりません…』
里白も焦っている。
『別になんともならないよ。ただ…人の生き死にを左右するのは御仏への冒涜になるとかいう理由だから。それでも…あたしは三蔵を助けたい。たとえ、罰をうけて、三蔵の任を解かれたとしたっていいよ。』
衣月はそう言うと手を合わせた。
経文が光り三蔵の体を包み込んだ。
しばらくすると光もおさまり衣月の肩に経文が戻っていった。
数秒後…三蔵が目を覚ました。
『三蔵っ!!良かった…』
衣月は横になったままの三蔵を抱きしめて言った。
『なんてツラしてんだよ…お前は笑ってろ…』
三蔵は優しい口調で涙でグチャグチャな衣月の顔を見て言った。