第3章 電光石火
八戒がすぐに傷を塞いでくれたので血もそこまで出ていないが、三蔵の意識は戻らないまま。
衣月はそんな三蔵の姿を今にも泣きそうな顔で見ていた。
『衣月…どうしたんですか?眠れませんか?』
寝ていたと思っていた八戒が唐突に言った。
『八戒…起きてたんだ…こうなるくらいなら…みんなに…会わなきゃ良かった…』
そう言った衣月の目からは涙が溢れていた。
『衣月…それは違うと思いますよ。僕達が会わなかったとしても危険な旅です。三蔵だって僕達だって何度も命の危険に晒されてきました。人である三蔵なら尚更のことです。』
八戒は諭すように言った。
『あたしさ…確実に三蔵に一目惚れしてるんだと思う。会った時にこの人がいい…この人じゃなきゃダメだって思った。今までの恋とは違ってさ…言うにも言い出せない…』
衣月は眠ったままの三蔵を見つめながら言った。
『三蔵はそういうものには縁がなかったでしょうからね…あなたを好きだとしてもあなたを傷つけるかもしれない。そんな時に今回のように気が緩んでいたら、同じ事の繰り返しですよ?』
そう言った八戒の言葉にはトゲがあったきがした。
『分かってる…分かってるんだけど…分からなくて…三蔵には言ったけどさ…あたし…修行中の事故が原因で子宮がないんだ…そんな奴が…恋なんてしていいのかなって…三蔵法師してるくせして…言葉も下手だし…うまく伝えられないし…教わったことしかうまく話せない…』
衣月は泣きながら話している。
『あなたはそのままでいいんですよ。話せてるじゃないですか。自分の気持ち。いつものようにストレートすぎる下ネタを言って三蔵を困らせていたらいいんです。』
八戒は今度は優しい口調で言った。