第20章 卒業式
「あのね、確かにあの日、俺は王子さまみたいな翔ちゃんに恋をしたけど。俺は翔ちゃんのカッコいいところだけが好きなわけじゃないんだよ?ヘタレで情けないところもカッコ悪いところも、全部ひっくるめて翔ちゃんが好きなの」
そう伝えれば、翔ちゃんは嬉しそうな、でもちょっと不満そうな、なんとも言えない複雑な表情になって。
「でも…俺は出来ればカズにはカッコいいところだけを見せていたいんだけど…」
なんて、まだそんなことを言うからつい笑ってしまった。
「ふふ、今さら…」
笑われた翔ちゃんはガーンってショックを受けたみたいだったけど。
本当に今さらだと思うんだよね。
だって、この3年間色んな翔ちゃんを見てきて。
カッコいいところだけじゃなくて、不器用だったりヘタレだったり、そんなちょっとマイナスな一面だって知ることが出来て嬉しかった。
俺は新しい一面を知る度にますます翔ちゃんのことを好きになったんだ。
だから今さらカッコつける必要なんてないのに。
それでも今もカッコいいところを見せたいと思ってる翔ちゃんは可愛くて。
とてもとても愛おしい。
「そりゃカッコいい翔ちゃんも好きだけど、無理してカッコつけなくていいよ。俺はそのままの翔ちゃんが大好き」
「カズ…」
大体、どんなにカッコ悪くて情けないところがあったとしても、それでも翔ちゃんは十分すぎるくらいカッコいいし。
「どんな翔ちゃんでも翔ちゃんは俺の王子さまだもん」
翔ちゃんの目を見てにっこり笑えば、翔ちゃんの顔が赤く染まった。
俺の大好きで大切な王子さま。
カッコつけなくていい。
そのままでいい。
俺の願いは1つだけ。
「これからも、ずっとずっと俺だけの王子さまでいてね」
「もちろん!」
俺のお願いを聞いた翔ちゃんはやっと笑顔になって力強く頷いてくれた。
「カズもずっとずっと俺だけの姫でいてね」
笑顔を取り戻した翔ちゃんはキラキラ眩しい。
俺、男だけど…って思わなくもないけど。
でもいいんだ。
翔ちゃんが王子さまなら、お姫さまポジションは誰にも譲らない。
「うんっ!」
俺も力いっぱい頷いて、翔ちゃんと一緒に笑った。
すごくすごく幸せだった。