第20章 卒業式
「校長先生、お仕事の邪魔してごめんね。でもすっごく助かりました。本当にありがとう!」
「いやいや、私も最後にゆっくり話が出来て楽しかったよ」
校長室の前で最後に改めてお礼を伝えたら、校長先生は笑って首を横に振った。
本心かもしれないけど、俺たちが気にしないようにっていう気遣いを感じる。
校長先生ってこんなに優しい人だったんだ。
今までそんなに接することがなかったから知らなかった。
もっと早く知れてたら…って思うけど、知らないまま卒業しちゃわないで良かったと心から思う。
「卒業してもここは君たちの母校だからね。いつでも遊びにおいで」
「うん!」
嬉しいお誘いに元気よく返事をしたら校長先生は楽しそうに笑ってから、俺と翔ちゃんの肩をポンと叩いた。
「櫻井くん、二宮くん、卒業おめでとう」
今日何度も聞いた言葉。
校長先生からも式の時に言われた言葉。
でも今しっかり目を見て伝えられた言葉は特別で。
校長先生が心から俺たちの門出を祝ってくれてるのがちゃんと伝わってきて。
すっごく心に沁みて涙が出てきた。
すかさずハンカチを渡してくれた翔ちゃんの目もちょっと潤んでる。
俺たち、先生にも恵まれてたね。
本当に幸せな高校生活だったね。
たくさんの感謝を込めて、深く深く頭を下げて。
ありがとう、ばいばいって手を振ったら、校長先生も笑顔で振り返してくれて。
すごくあったかい気持ちで一歩を踏み出した。