第20章 卒業式
「あ、そういえば…」
荷物を取りに教室へ向かいながら、ふと思い出してスマホを取り出す。
ポケットの中で何度も震えてるのは気づいてたんだけど、追い掛けられてる時はそんなの見る余裕なかったし。
校長室に匿ってもらってる時も、さすがに校長先生の前でスマホ見る訳にはいかないからね。
ずっと放置しちゃってたんだ。
「うわ…」
やっと確認出来たスマホには、ものすごい数の着信やメッセージがきてて。
あまりの多さに思わず声をあげると、隣で同じく自分のスマホを確認していた翔ちゃんが苦笑した。
たぶん翔ちゃんスマホも同じような状態なんだと思う。
「みんなにかなり心配掛けちゃったみたいだね」
「うん」
本当に色んな人が俺たちのことを心配して連絡をくれてたんだけど、中でもダントツで多かったのは智からで。
その文面からも、量からも、めちゃくちゃ心配してくれてるのが伝わってきて。
慌ててもう大丈夫だよってメッセージを送ったら、即電話が掛かってきた。
「もしも…」
「ニノ!!大丈夫!?ケガしたり泣いたりしてない!?」
いつにない早口でまくし立てられて、それだけで智がどれだけ心配しながら俺からの連絡を待っていたのかが分かる。
「心配かけてごめんね。ちょっとピンチだったけど、今はもう大丈夫だよ」
「ピンチって……」
泣きそうになってる智を早く安心させてあげたくて、智たちと別れてから起こったことを説明していく。
話を聞いた智は俺のそばを離れたことをすっごい後悔してたけど、まさかこんなことになるなんて誰にも予想出来なかったよね。
校長先生が助けてくれたから大丈夫だよ、ケガもないし泣いてもないよって伝えたら、やっと智も安心してくれたみたいだった。