第20章 卒業式
ここから見える範囲には誰もいないし、物音も全く聞こえない。
本当に誰もいなさそう…
安全な場所から確認させてもらえて。
安心して詰めてた息をふーっと吐き出した。
「大丈夫?歩ける?」
翔ちゃんに小さな声で確認されて、そろりと足を動かしてみる。
うん、大丈夫だ。
もう普通に動く。
翔ちゃんに向かって笑顔で頷いて見せたら、翔ちゃんも安心したように笑った。
「それじゃあ、行こうか」
翔ちゃんの手に優しく背中を押されて。
校長先生が開けてくれた扉をくぐって廊下に出た。
念のためキョロキョロ辺りを見回してみるけど、右を見ても左を見ても人っ子一人いない。
耳を澄ませてみてもなんの気配も感じられない。
きっと先生たちが頑張ってみんな下校させてくれたんだろうな。
俺たちのせいじゃないとは思うんだけど、不本意ながら俺たちが騒ぎの原因になっちゃったのは事実だから。
ちょっと責任を感じるというか、申し訳ない気持ちになっちゃって。
最後の最後に面倒な仕事増やしてごめんなさいって、届かないとは思うけど心の中で先生たちに謝っておいた。