第9章 現世編(後編)
「うむ。おそらく今頃、尸魂界から朽木ルキアを連れ戻す部隊が派遣されとるじゃろう。そして、一護をルキアを助けるという名目で尸魂界へ向かわせ…藍染の目論見を暴き尸魂界から離反させる…それが喜助の考える筋書きじゃ。」
「待って下さい…ルキアを助ける、ってルキアこれからはどうなるの…?」
「儂の聞いた話では死刑囚となると聞いた。本来、死神の力の譲渡は即極刑となる程重くは無い。藍染が絡んでおると考えて間違いは無いじゃろう。崩玉を取り出すのに1番手っ取り早い。」
「そんな…!」
「安心せい、死なせはせぬ。尸魂界には儂も向かう。」
「無茶苦茶だよ…。」
死神の都合に人間を巻き込んで、関係の無いルキアを傷付けて…これが正しいやり方とは到底思えなかった。他に方法は無かったのだろうか…。
「そう言うてやるな。喜助も相当悩んだようじゃ。賭け事にも近いからの。」
「…私も、尸魂界に行きます。ルキアは殺させない。崩玉も、渡さない。」
「無論じゃ。」
それから数分後、徐々に身体の感覚が戻り始める。霊圧も感知出来るようになりゆうりはハッとして顔を上げた。知っている霊圧が2つ。
「夜一さん……!!ルキアを連れ戻しに来ているのってまさか…!」
「…白哉坊の様じゃな。」
「もう1人は恋次…?どうして、他隊の二人がわざわざ…。」
急激に一護の霊圧が萎んで行く。そこで漸く指先がピクリと動いた。後は、完全に力に任せ身体を動かす。震える手で床を押し、立ち上がる。フラフラとした足取りで玄関へ向かい扉を開けば外はザァザァと雨が降っていた。
ゆうりは素足のまま店を飛び出し走る。冷たい雨がシャワーの様に降り注ぎ服が、髪が嫌に肌へまとわりつく。それでも息を切らし走る。しかし、戦闘があったであろう場所に辿り着く頃には白哉、阿散井…そして最後にルキアの霊圧が現世から完全に消えてしまった。どうやら間に合わなかったらしい。代わりにそこには石田が立っている。彼はゆうりの姿に気付くなりゆっくりとうつ向けていた顔を上げた。
「染谷さん…?」
「雨竜…?此処で、何があったの…?」
「…朽木さんが、死神2人に連れて行かれた。僕……そして、黒崎ですら歯が立たなかった。」
「……そっか。腕見せて。治すから。」