第9章 現世編(後編)
「崩玉とは、死神と虚の境界線を越える為の物質です。ボクはこれを100年ほど前に造り、そして封印しました。」
「封印を?なぜ?」
「造った瞬間悟ったんスよ。これは非常に危険な物質だ、と。色々手を尽くしましたが崩玉はとてつもなく頑丈で、造ったボクでも破壊する事は叶いませんでした。その結果、封印するしか手が無かったんス。」
「そんなに危険なものだと分かっていて何故造ったの?藍染は、喜助が造った崩玉を使って虚化を…?」
「造った理由は科学者としてのどうしようもない好奇心ですかねぇ。誰も成し得る事が出来なかった、魂の限界強度を超えるという行為を現実にしたかった。藍染はボクが造った崩玉は使っていません。おそらく彼はボクと同じ理念に辿り着いたんでしょう。けれど彼は崩玉を完成させる事が出来なかった…その結果が平子サン達なんですよ。そして今はボクの完成した崩玉を狙っている。」
「藍染は未完成の崩玉を使って、虚を強化させたり真子達を虚化させたりしていたのね…。喜助が封印した崩玉は今どこに?」
「……あー…それは、ですねぇ…。」
言い淀む浦原は指先で頬をかいた。また何か誤魔化す言葉でも探しているのかと勘繰ったゆうりは逃がさないとばかりに彼の肩を掴みジッと瞳を見詰める。
「言って。」
「…朽木サンの中です。」
「……はい?」
「朽木ルキアさんの、魂魄の中に有ります。」
今度はゆうりが呆気にとられる番だった。頭での処理が追い付いてこない。先の会話で崩玉がとても危険なものだというのはよく分かった。それが友達の中に埋め込まれてる…?喜助の手によって?
「……どッ…どうしてそんな危険なモノがルキアの中にあるの!?」
「朽木サンに渡した義骸は、常に霊力を分解し続けます。つまり彼女はこのまま霊力を失い、完全な人間になる。そうすることで、藍染から完全に崩玉を在処を眩ませるのがボクの計画です。」
「な、何を馬鹿な事を言ってるの…?そんなのルキアの同意なしにやっていいと思って……!」
「1人の死神が人間に変わるのと、世界の全てを救うのと、貴方はどちらが大事ですか?」