第9章 現世編(後編)
「んあ!?これか!?」
ぽけっ、としていたジン太は突然掛けられた声にハッとし目の前を彷徨く虫に向けて金棒を振る。数回スカしたものの、最後に思い切り地面へ叩き付ける事で虫は無惨に潰される。
「さァ、後片付けですぞウルル殿!」
「テッサイ、空のヒビ割れの補修よろしく♡」
「お任せを!ジン太殿!ちょっとそっちを押さえてて下され!」
「おう!」
握菱、ウルル、ジン太はその場から離れていく。ゆうりはジン太の潰した虫へ歩み寄りしゃがんだ。ジッ目を凝らす。血が出ていない。これは機械だ。そしてこんな精密でリアルなモノを作れるのはおそらく、あの人しか居ない。立ち上がったゆうりはそれを片足で完全に潰し浦原の隣へ並ぶ。
「…喜助、あの虫……」
「技術開発局の現世偵察機でしょうね。おそらくこれで朽木サンの事は尸魂界へ知れてしまった。ゆうりは…どうですかねぇ。」
「どうですかね…って、どういう意味?バレるでしょう、死神の格好だし、外套も着てないし…。」
「アナタは向こうで死んだ死神とされていますから。その上事件があったのは少なからず20年以上も前です。アナタを知らない死神も既に多いでしょう。現世の虚出現管理は技術開発局でも下っ端の子が務めることも多いですし場合によっては、派遣されている履歴の無い死神が空座町に存在する、程度の情報しかいかない可能性も充分にあります。」
「……そうだと良いんだけど、ね。」
ゆうりは妙な胸騒ぎを覚えチラリと残骸に視線を向ける。この事件が切っ掛けに、井上、茶渡、一護…そしてゆうり、ルキアの運命が大きく変わっていく事などその場に居た誰もが想像すらする事は無かった。
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