第9章 現世編(後編)
「そうだ…こうすればいいんだ…!」
黒崎が御しきれない霊気を僕が奪い、固めて放出すればいいんだ!次から次へ、次から次へ。黒崎の霊気が落ち着くまで…!
一護の元へ一歩歩み寄る。途端に霊子兵装への影響は大きくなり、抱え切れない霊気がまるで刃のように彼の細く白い腕を切り裂いた。それでも、この事態を引き起こした負い目も有り、石田は引き下がらない。何度も何度も矢を穿ち一護の霊気を空へと逃がす。
「…?な…何してんだおまえ…?」
「うるさい!」
「な…なんだかしんねーけど辞めろよ!手ェボロボロになってんぞ…!」
「うるさい!言っただろう!僕は死神を憎む!言っただろう!お互いここで生き残らなけりゃ殴る相手がいなくなる!礼を言えだって!?冗談じゃない!生き残って殴らせろ!!黒崎一護!!僕を殴れ!黒崎一護!!」
痛みが収まる事はもちろんなかった。寧ろ矢を放ち続ける事で傷は増える一方だった。それでも行為を止めてしまえばおそらく一護はこのまま霊力の暴走で消滅してしまう。それだけは絶対にダメだ。
霊力を空へと飛ばしながら様々な想いが石田の中を駆け巡る。死神に抱く感情、師の願い、過去の弱かった己…それは表情にも現れる。指先に滴った血で滑りながら最後の1本が空へと消えて行く。息を切らし膝を着いた石田の顔は余りに憂いを帯びており、一護は空に視線を移した。
「…ちぇっ…そんなカオしてる人間殴れるかよ…ちくしょうめ。」
「……大虚を撃退、か…これを尸魂界に隠し通すのは無理でしょうね…ん?」
現世に現れる虚の情報はほぼ一括して十二番隊で管理をされる。虚の異常発生をしていた空座町は間違い無く目をつけられていただろう。その状況下での大虚だ。一護の情報だけでは無い。おそらくルキアも…そして自分自身の居所もバレてしまうかもしれない。そう思って目を伏せると、目の前にやや大きめな虫が現れた。不自然な程目の前で停滞するソレにゆうりは眉を顰める。ひっそりと片手を持ち上げ捕まえようと伸ばせば虫はひらりと手をかわし飛んで行く。
「ジン太!その虫潰して!」