第9章 現世編(後編)
「喜助、ルキア!何、この魄動は!何が起こってるの!?」
「ッ……すまぬ、私は一護の様子を見て来る!」
「私も……!」
店から飛び出して行ったルキアを追おうとした矢先、浦原の隣を通り抜ける前に手首が彼に掴まれる。ルキアは突然際限なく湧き始めた虚に焦っているのか、そんなゆうりには気付かず行ってしまった。ゆうりは振り返り、浦原へ視線を落とす。彼の表情は、感情が読めぬ程無表情に見えた。
「どうして止めるの?」
「今は朽木サンを追うべきではありません。我々は別の所に向かいます。テッサイ、ついて来て。」
「承知しました。」
「ゆうりも死神化はしなくて結構です。そのまま行きましょう。」
「え、え…でも…。」
「今この状況下でピンチなのは黒崎サンなんかじゃないんスよ。」
立ち上がり、下駄を履いた浦原はカランコロンと独特な音を立て外へと向かう。彼の背中を見ながら今の言葉の意味に思考を巡らせ、ゆうりはハッとする。直ぐに辺りの霊圧を探り冷汗を流す。井上の近くに一体…そして茶渡と夏梨の元にもう一体。確実に虚が居る。
「…織姫とチャドを、守ればいいの?」
「いいえ、手出しは一切しません。必要も有りませんから。」
「??…もう、何を考えてるのか少しくらい教えてよ!」
「行けば分かりますよん!ほら、急いで下さい!ウルル、ジン太、2人もお店閉めて戦闘の準備しておいて!」
「おう!派手に暴れてやるぜ!!」
「わ、分かりました…。」
部屋に居た2人にも声を掛け、浦原、握菱と共にゆうりはまず茶渡の霊圧を感じる場所へと向かうのだった。
到着したのは既に人の居ない空き地だった。そこにはやや大型の虚と、それと対峙する茶渡と夏梨の姿が有る。見ている限り、どうやら背中に背負われている夏梨が虚の位置を茶渡に伝えどうにか攻撃を避けているらしい。
3人は手を出さず、ひっそりと息を潜めその光景をただ見ていた。
「……ほ、本当に助けないの…?」
「大丈夫です、本当に危なくなったらボクが出ますから。」
そう言った彼の横顔はまるで何かを見定めているように感じた。ハラハラと落ち着かない中、虚に思い切り殴られた茶渡がとうとう倒れる。しかも、そのタイミングで夏梨のクラスメイトなのか、数人の男の子たちが血塗れで倒れる茶渡の元へ駆け寄ってきた。