第9章 現世編(後編)
「学校に行きたくない?」
「いや、別に行きたくない訳じゃないけど…改造魂魄の件で一護達と一緒に行動したけど意外に2人噛み合ってるし、一護にはルキアが付きっ切りだから別に私が見ておく必要も、何かする必要も無いかなと思って。」
「まぁ確かに…けどいいんスか?学校にはお友達も随分居るでしょう。」
「私は学生じゃなくて死神よ。それに、現世に居る本来の目的を見失うわけにはいかないから。」
「…分かりました。学校にはボクが連絡しておきましょう。」
そんな会話を浦原とゆうりがしたのは既に数日前の話だった。学校を休むようになってからは、彼の研究室に朝から晩まで入り浸りひたすらに研究資料を追い続けている。今日も何やら怪しげな液体を扱う浦原の傍で本棚にもたれて座り、1冊の資料に目を通していた。
「死神が今持てる魂の限界強度を越える実験って、今よりもっと昔からやられてるんだね。」
「そうですねぇ。どれだけ鍛錬を積んでも、どこまで自分を追い詰めても必ず人は己の限界値というものを知ります。それでも、限界を越えて強くなりたいと思う死神は少なくは有りませんから。」
「なるほど、ね…その成功例が真子達になるの?」
「或る意味ではそういう事になるんじゃないっスかね。彼等にとっては不本意極まり有りませんでしたでしょうし、そもそも下手をすれば失敗していましたけれど。」
「喜助が居なかったらそのまま失敗で終わってたって事だもんね。…資料には色々な、限界を越えるための実験方法や結果が書いてあるけれどどれも失敗に終わってるわ。けれど虚化に関する資料は無いのはどうして?」
ゆうりはパラパラと本をめくる手を止め顔を上げて浦原を見詰めた。実験中では帽子は邪魔になるのか、昔の姿そのままの彼はキョトンとした顔で彼女を見下ろす。
「決まってるじゃないスか!残すのは危険だと判断したからですよん。確かに、虚化は死神としての限界は越えられる。けれどリスクも高いし、クインシーは希少です。ワクチンが直ぐに作れるとは限らないんですよ。それにボクが見た反応とは全く別の反応が出る可能性だって充分に有る。安全性の確立していない実験結果は載せるべきでは有りません。悪用されては困りますから。そもそも虚化の実験なんて違法ですし。」
「へぇー…喜助って意外としっかり考えてるのね。」
