第9章 現世編(後編)
「な…」
「さ、任務かーんりょー。帰るよみんな!ゆうりも、1度一緒に引き返して下さい。」
「…まだ、一護の傷治してないし学校にも戻らないと。」
「この時間じゃあもう終わってるでしょう。」
「ちょ…ッ、ちょっと待てよ!そいつどうする気だよ!?」
「どうって…破棄するんですが?」
「…俺が…見えるんだな…それに、ゆうりと知り合いなのか…?何者だあんた…」
「はて、何者と聞かれましても…」
「強欲商人だ。」
掌で軽く投げ、義魂丸を弄ぶ浦原の後ろに現れたルキアは玉が投げられたタイミングで義魂丸をパシッと掴んだ。手の中に戻って来ない玉に彼は慌てて振り返る。
「くっ…朽木サン!ダメっスよそれ取っちゃ!」
「なんだ?浦原。貴様の店は客に売った商品を金も返さずに奪い取るのか?」
今度はルキアが玉を手の中で弄ぶ。1度は客に売り付けたものだ。それを返金や交換すら無く返せというのは、確かに納得もいかない。浦原はグッと押し黙ると焦って言葉を続けた。
「そ…そんじゃ仕方ない金を…」
「必要ない。こちらはこの商品で満足している。…それに、元々霊法の外で動いている貴様らだ。そうまでしてコイツを回収する義理もなかろう?」
「…知りませんよ?面倒なことになったら、あたしら姿くらましますからね。」
「心配するな。最近は面倒にも慣れた。」
そう言った彼女の表情は浦原を含む誰にも見えなかった。
すっかりボロボロになってしまった一護をそのまま学校に返す訳にもいかず、ゆうりは鬼道で彼の肉体に残る傷を治す。改造魂魄は、最終的に一護の手へと戻るのだった。
「…いつもありがとな。傷、治してくれて。」
「…いいの、これくらいしか出来ないから。」
すっかり怪我をする前の状態になった一護は申し訳無さそうに頭を掻いて礼を述べた。そんな彼にゆうりは緩やかに首を横に振り目を伏せる。
「ゆうり、帰りますよん!」
「あ、はーい。それじゃあ2人とも、また明日ね。」
手を振り、彼らと分かれ浦原達の元へ駆け寄る。一護は強い。そして、とても優しい。彼はまだまだ強くなれるし、多分なるだろう。若い彼を心配して着いては来たが心配など要らなかったのかもしれない。今後は手出しをせず、自分の力を高める事に注力を注ごう…ゆうりは密やかにそう思うのだった。
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