第9章 現世編(後編)
「アホかァ!ただのクラスメイトにいきなりキスして大したことねーワケねえだろ!ていうかどんな本読んでんだテメーは?あぁ〜〜コツコツと積み上げてきた俺のイメージが…明日からどんな顔して学校行きゃ良いんだ…。」
「大丈夫だって、最悪記換神機で消しちゃえば良いんだから。」
相当女性に手を出してしまったのが嫌だったのか、両手で頭を抱えながら蹲る彼にゆうりは苦笑してポンと肩を叩く。一護は数秒黙り込むと視線を地面に落とし静かに立ち上がる。
「ーー…ゆうり、さっきアイツの事…"改造魂魄"とか言ったよな…それってなんなんだ?」
背中を向けたまま投げられる問いかけにゆうりとルキアは顔を合わせた。どう説明するのが良いのか迷ったが、結局下手に隠して話すよりも素直に本当の事を伝える方が早い…そう判断をしたルキアが口を開く。
「嘗て…ソウル・ソサエティで"尖兵計画"という計画が持ち上がった事があった。」
「スピアヘッド…?」
「あぁ。」
「簡単に言うと、死んで魂が抜けた肉体に戦闘特化した魂を注入してそれをそのまま対虚用の尖兵として使おうっていう最低な計画よ。」
「な…」
「その時開発された、注入する事によってその肉体の1部を超人的に強化できるよう設計された戦闘用擬似魂魄…それが"改造魂魄"だ。」
「彼の場合、下肢の機能を特化させた"下肢強化型"のタイプね。高い所から跳んでもなんともなかったし、足も早かったでしょ?」
「じゃあ…その計画的に作られたヤツが流出したってことか?」
「問題はそこだ。実は"尖兵計画"は死体を戦わせるという非道さから完全成立前に廃案になっているのだ。その廃案と同時に開発途中のものも含む全ての"改造魂魄"の破棄命令が出されたのだが…どこに紛れていたのかまだ現存するものがあったとは…な?」
「う…ご、ごめん…粗悪品として管理してたみたいなんだけど、間違えてルキアに渡したみたいで…。」
チラリと視線を向けられたゆうりが言葉を詰まらせ罰が悪そうに視線を横に流した。己のミスではないものの、自分の働く店で起こったミスだ。他人事では居られない。
「…ちょっとまてよ…」
「…?」
「…てことはナニか…?あいつは…オマエら尸魂界の都合で作られて…尸魂界の都合で殺されるってコトか…?」
「…そういうコトになるな。」