第9章 現世編(後編)
「分からなければ明日まで待て!」
記憶置換がピンと来ないのか首を捻る一護に、ゆうりは井上にやった時と同じように治癒霊力をあてた。額や手の甲、至る箇所に出来た傷がみるみる内に癒えていく。その間にルキアは気を失っている有沢へ記換神機を問答無用で喰らわせた。
「ふむ、これで問題ないな。」
「なんで織姫は肉体から引きずり出されてるの?」
「こやつを襲った虚が無理矢理引き剥がしたのだ。まだ鎖は切れておらぬし、戻せば大丈夫だろう。」
「へぇ…。」
あの日の帰り道見かけた虚の仕業だったのだろうか。だとしたら織姫には申し訳ないことをしたな…。治すだけではなく、倒してしまえば良かったのに、見逃したのが良くなかった。尸魂界に見付かる事より友達を失う方がよほど辛いのに。
少しばかり気持ちが沈みながらもゆうりは彼女の両脇に腕を差し込み身体を肉体へと戻す。息苦しさが無くなったのか井上は眠る様に規則正しい寝息を繰り返した。
「織姫を守ってくれてありがとう。ルキア、一護。」
「礼を言われるような事はしておらぬ。これも仕事だ。なぁ、一護!」
「あー…まぁな。お前も、傷治してくれてありがとよ。」
「どういたしまして。」
翌日、学校に登校して来た井上はクラスの友人に、アパートが壊れた理由を"部屋に横綱が来てテッポウで穴をあけた"と言い張り今まで以上に不思議ちゃん扱いされたのはまた別の話である。
*