第9章 現世編(後編)
「好きだよ。恋愛感情って私が一番良く分からないものだからこそ余計気になるし、知るのが面白いの。惚気とか、聞いてると羨ましいなって思うし自分まで幸せになれる気がするから。」
「染谷さんって、薬指に指輪してるけどそれ彼氏から貰ったやつじゃないの?ぼく恋人居るものだと思ってたんだけど。」
「それ!俺もずっと気になってたんだよ!!水色グッジョブ!」
「あ、これ?…最近突っ込まれること無いからすっかり忘れてたよ。この指輪は幼馴染から貰っただけで深い意味は無いの。」
「左手の薬指につける指輪を…!?そ、それって男、ですか…?」
「男だよ。」
「ぐぬぅッ…!!」
浅野はなんとも形容し難い表情で下唇を噛み締める。男から貰った指輪に下心が無いとか思えない。これは同じ男だからこそ分かる!!絶対意味があって渡してる筈だ…!!
水色を除き百面相をし始める男達にゆうりは数度瞬きを繰り返し、ルキアへと視線を向けた。
「ルキアも放課後一緒に帰る?」
「いや、私は浦原商店に寄らねばならぬ……ならないので先にお暇しますわ。」
「えっ、商店に寄るって…もうこっちでは過ごさないの…?」
「えぇ、良い住処を見つけましてよ。」
「そうなんだ…。」
そう言って彼女は口角を吊り上げた。一緒に商店で過ごす事が叶わなくなった事を知り残念そうに眉を下げる。それでも全く会えないというわけで無いので無理に引き留める事はせずにもそもそとパンを齧った。
昼休みが終わり、午後の授業を終えると約束の放課後が訪れる。鞄に教科書をしまい終えたゆうりは一護の元へ向かう。
「どこ行く?」
「そうだな…人が居ねぇところの方が良いよな?」
「うーん、一護が話したい内容によるけど…あ、じゃあ一護の家お邪魔してもいい?」
「え!?い…いや、別に良いけど…。」
「じゃあ決まりね!」
思わぬ提案に声が裏返る。やましい気持ちはひとつも無い。聞きたいのは、死神としてのゆうりの事についてだ。別に何か部屋で起こることなんか…それに、夏梨は遊びに行ってるかもしれねぇけど遊子は居る筈。
2人は揃って下駄箱へ向かった。教室から学校を出るまで痛い程に視線を浴びた気がするが、それよりも彼女と2人きりという状況になんとなく気恥しさが勝る。