第9章 現世編(後編)
「なぁ、今日放課後空いてるか?」
「放課後?うん、良いよ。」
「なんだ!?一護お前またしても染谷さんとデートのお約束か!?お、俺ですら誘えてねぇのに…ッ!!」
「デートじゃねぇよ!つーかお前ら、着いて来るなよ。」
ルキアが転校して来た次の日の昼休み。ゆうり、一護、浅野、小島、ルキアは屋上で昼食を取っていた。昨日の虚はどうやら無事彼の手によって退治されたらしく、戻って来た一護に怪我も見当たらなかった。首尾は上々といった所らしい。
「昨日だって朽木さんと染谷さんを連れ出して何してたんだよ!三限も結局戻ってこねーし!」
「そりゃ……アレだよ。なぁ?」
「屋上でサボってたんだよ。」
「染谷さんって真面目かと思ってたけど意外とそういう事言うんだね。」
「真面目…そう見える?」
「実際、真面目ではないかしら?」
「あ…ありがとうルキア。」
どうしてもルキアの口調に慣れない。現世に馴染む為学んで来たのが何故お嬢様言葉なのだろう…。彼女はそれで良いと思っている様だが素のルキアを知る身としては元の口調の方がよほど似合っていると感じてしまう。
ゆうりは昼食用に持って来たイチゴジャムパンを齧り咀嚼する。ふと、昨日井上達と交わした会話を思い出した。
「水色は彼女居るんだよね。」
「え?まぁね。年上の彼女が居るよ。」
「一護は?」
「あ?」
「一護は好きな人とか、彼女とか居ないの?」
井上に問い詰めた時と同様、興味津々とばかりに目を輝かせ身を乗り出すゆうりに一護はたじろぐ。
…コイツは一体なんのつもりでそんな事を聞いて来てんだ。なんだその好奇心に満ち溢れた目は!
爛々とした瞳で見詰めると彼はパッと顔を背ける。
「いッ、居ねぇよ!!」
「なーんだ…。」
「女の子ってそういう話題好きだよね。」
織姫と両想いとかだったら素敵だと思ったのに…。
そんな心象で肩を下げたゆうりに一護は困惑した。
なんでゆうりがガッカリしてんだ。俺に好きなやつが居ないと落ち込む理由が有るのか!?まさか…イヤ、ないないない。
心の中で期待を膨らませ、バクバクと心臓が高鳴りそれをかき消す様に大きく頭を横に振った。そんな彼をルキアは冷めた瞳で見遣る。