第9章 現世編(後編)
「そうだ!てめえの仕事はもう済んだんだろ!?それがなんでウチのクラスに潜り込んでる?尸魂界とかいう所に帰ったんじゃなかったのかよ!?」
「たわけ!尸魂界に戻れるのは死神だけだ!今の私にあそこへ戻る術がない。」
「あん?どういう…ー」
「私が…死神の力を失ったからだ!」
「!?な…」
「で…でも俺はもう死神じゃねぇぞ!?ドコいったんだ、その"死神の力"は?」
思いもよらぬ宣告に一護は驚き己の服を引っ張る。昨日、いつの間にか着ていた着物は今、着ていない。自分の姿は生きている周りの人間達にも見えている。昨夜の事が全て夢であったとすら思えていた筈なのに。
「おまえの"中"だ。おまえの"肉体"ではなく"魂"が死神化しているのだ。ゆうりは昨日戦いの後倒れた貴様を肉体に戻し、傷を負った家族の治療までしてくれたのだぞ。有難く思え。」
「……やっぱり、コイツに連れて来られたって事はお前も死神だったのか。」
「うん、黙っててごめんね。そもそも人に言うことでも無いから言わなかったんだけど、これから一護に協力する事になるだろうから。」
「協力…?って何の話だよ?」
「昨夜あの時、私の力は殆ど貴様に奪われてしまったのだ!私に残っているのは僅かな鬼道を使う力のみ…今もこうして義骸に頼らねばならん程だ!」
「ギガイ…?」
「緊急用に我々死神に支給されている仮の肉体の事だ。極度に弱体化した死神はこれに入って力の回復を待つのだ。」
「その体がそうなのか?人型なのか。」
「そうだ、弱体化した死神は虚から狙われやすいからな。人間のフリをしている。」
「ちょっと待てよ、ならなんでゆうりもその…ギガイ?ってヤツを着てんだ?お前も弱ってる状態って事か?」
「私はもっと特殊というかなんというか…ルキアは尸魂界から正式に任務として現世に派遣された死神だけど、私は尸魂界から追放された死神なの。尸魂界に見付かるのは困るからこうして人間のフリをして現世で過ごしてるだけ。弱ってはないよ。」
「いや…弱ってる以前に今とんでもねぇ事言わなかったか…?」
「とにかくだ!先程の貴様の問に答えてやる。これから私の力が戻るまでの間、死神としての仕事を手伝ってもらう!」
ルキアはさも当然とばかりにふんぞり返り片手を差し出す。それを見て一護は元々不機嫌そうな顔を更に歪めた。
