第9章 現世編(後編)
「えー?だって実際あいつの事考えてたんじゃないの?」
「ねぇねぇ、一護のどこが好きなの?」
「そうよ!ブアイソだし髪は変な色だし、ガキだし短気だし…正直あんたみたい巨乳美人ならもっと上を…」
「おもしろいところ!」
「へ?」
「一護ってそんな面白いの?」
「面白いよ!あたしはあの、いつもしかめっ面してる黒崎くんのカオを思い浮かべてるだけで……ブプーーッ!!最高!!」
怪訝な顔をするゆうりと有沢を無視して井上は瞼を下ろし、恍惚と何かを想像し始める。数秒の間を置いて、一体何を想像したのか彼女は耐えきれずに吹き出した。
「そ…そうかなぁ…。」
「織姫って、ツボがよく分からないわね…。」
「今日休みかもしんないよ、一護。」
一護の話題を聞いてか、突然小島が3人へ声を掛けてきた。ゆうりは既に話を聞いていた為驚きはしないが、何も知らない2人が目を丸める。
「小島くん。」
「どういうこと?そういや小島いつも一護と一緒に来てるよね。」
「うん、今朝も寄ったんだけど家にでっかい穴があいててさ、なんか夜中トラックに突っ込まれたって言ってた。オジサンが。」
「トラックぅ!?じゃあ何?あいつ怪我したの!?それとも死ん…」
「でねえよ。」
驚愕の声を上げた有沢の言葉を遮る様に彼女の後頭部をカバンが襲った。つんのめった有沢は言葉尻が窄み、叩かれた箇所を手のひらで擦りながら振り返る。そこには今丁度、話の中心となっていた男がいつもと変わらないしかめっ面で立っていた。
「ウチの連中は全員無キズだ、残念だったな。」
「黒崎くん!」
「おはよう、一護。」
「お…ッ、おおおおはよう!」
「お…?おうっ、今日も幸せそうだな井上。」
自然に挨拶をするゆうりとは違い井上は先程の想像を引きずっているのか、笑うのを堪える代わりに吃りながら挨拶を交わす。不自然過ぎる井上を不審に思いしつつそれに応えながら一護はカバンを机横に掛け椅子を引く。
「来たんだね。家の修理手伝ってたの?」
「まぁな。三限は?」
「現国。」
「越智サンか。まーあの人ならゴチャゴチャ聞いて来ねーだろ。」
「貴様………あなたが黒崎くん?よろしく!」