第9章 現世編(後編)
「無論だと思うが…如何せん他の隊と交流が深い訳でも無いからな…。そもそも、あそこまで自由に隊を行き来していたのはゆうり位だぞ。」
「え!?…言われてみれば確かにそうだったかも。」
昔馴染みという事で多少許されている部分があっただけで本来あれ程までに他隊の隊長や副隊長と密に関わっていたのは、自分以外に居なかった気もする。深く考えてはいなかったが思い出すと、周りとは違う事を当然のように行っていた事に若干の羞恥を覚えゆうりは人差し指で頬を掻いた。
「別にそれが悪いとは思っておらぬし、他の者もそうだろう。目上だろうが臆する事無く友好関係を築けるのは凄いことだと私は思うよ。」
「ルキアに褒められるとなんだか照れるなぁ。」
軈て空座第一高等学校が見えて来た。ゆうりはいつも通り下駄箱へ向かい、ルキアを別の入口から職員室へと案内を済ませ教室へ入る。小島と浅野は既に登校しているが、普段彼らと共に来ている筈の一護の姿は見当たらない。
「おはよう水色、啓吾。一護は?」
「おはよう染谷さん。なんか夜中家にトラックが突っ込んだみたい。今日は休みかもね。」
「すげーでっかい穴空いてたもんな。でも一護のオジサンが、家族は全員怪我無しだって言ってましたよ!」
「あ……はは…そうなんだ…。無事なら良かったよ。」
思わず片側の口角がヒクリと引き攣った。記憶は上手くすり替わったらしい。しかし、あのまま放置するのは矢張りまずかったかもしれない…今更そんな事を思う。
「ほらお前ら席つけー。ホームルーム始めるぞ!」
チャイムが鳴って直ぐに担任の越智が入ってきた。手には出席名簿が有り、片手で開きつつ生徒達が席に座った後の教室を見渡す。
「なんだ、黒崎は休みか?連絡来てねーぞ…まぁいいか。今日は転入生を紹介する。」
「また!?」
「このクラス多くね…?」
「煩い!入ってこーい。」
ザワつく教室は鶴の一声で静かになる。越智に呼ばれたルキアは教室の外でビクリと肩を揺らし、些か緊張した面持ちでゆっくりと扉を開いた。ギクシャクとした足取りで越智の隣に並ぶ。
「…朽木ルキア、です。両親の都合で空座町に引っ越して来ましたわ。これからよろしくお願いします。」