第9章 現世編(後編)
夜が明け遂にルキアの学校生活が始まる。どうやら浦原は本当に一夜にして学校に入学する準備を整えたようで、起きたらゆうりの部屋の前に綺麗に畳まれた制服が置いてあった。ルキアはルキアで、喋り方を何とか現代に合わせようと言葉遣いに関する本を夜中読み込んでいたらしい。なるべく溶け込む努力をする彼女を後目に、しっかり睡眠を取ったゆうりはルキアと共に制服に着替えつつ声を掛けた。
「一護、今日学校来るかな。家半壊しちゃってるし無理かしら。」
「どうだろうな…それより家族の記憶はちゃんと改竄されているのかが心配だ。」
「大丈夫だよ、喜助が作った機械だもの。」
「…ゆうりは心底、浦原を信じておるのだな。」
「まぁね。ヘラヘラしてて分かりにくいけど本当は結構真面目だし、戦うと強いんだよ。私は喜助が戦ってる所見た事ないけど。」
「なるほど、見た目で判断するなとはまさにヤツの事か…。」
制服に着終えるとルキアはスカートの端をポンポンと軽く叩いた。彼女を頭のてっぺんからつま先までマジマジと見てみる。己よりもだいぶ小柄で小さい事もあってか、自分よりよほど高校生らしい姿にゆうりはひっそりと肩を落とす。
「ルキアは制服似合うね…私なんて一歩間違えたらコスプレだよ…。」
「たわけ、私も既に100を越えているのだぞ。どの道、本来この様な服を着る歳では無い。」
「そんな悲しいこと言わないで!見た目が若ければそれでいいんだよ!」
分かっていた事をズバリ口に出されると、いたたまれない気持ちになる。そんなやり取りを経て学校に通う準備の整った2人は揃って玄関に置いてあるローファーを履き商店を出た。
「行ってきます!」
「世話になったな。」
「い、行ってらっしゃい…。」
「じゃあな。」
徹夜で作業していた浦原は研究室かどこかで熟睡を決めているようで返事は無い。握菱は既に起きていたが仕入れをしているが故声は届かなった。代わりに店先で掃き掃除をしていたウルルとジン太と挨拶を交わし、既に同じ制服を着た生徒達が疎らに登校する通学路へ混ざる。
「ねぇルキア、尸魂界って私が居なくなってから何か変わったこと有る?」
「いや、特に無いな…十番隊の三席が埋められた程度だ。」
「そうなんだ…みんな元気にしてる?」