第9章 現世編(後編)
「大丈夫っスよ、黒崎サンの霊圧は一般の死神と比べてもかなり高い。あたしがバックアップしましょう。」
「…貴様がそこまで手を貸してまで奴に固執する理由はなんだ?」
「そんなの決まってるじゃないスか。この町で虚が野放しにされるのは困るからですよん。貴方は今、この瞬間から尸魂界にとって罪を犯した重罪人です。だから向こうと連絡を取るなんて言語道断。けれどこの町には虚が湧いてくる。アタシもゆうりも、虚退治に関しては一切関与しません。この町を守れるのはアナタだけだったのに、アナタはその力を失ってしまった…放っておけばこの町は虚によって荒れ果てるでしょう。それを指くわえて見てますか?それとも、この町そのものを見捨てて逃げますか?」
「たわけ!朽木家の者が、託された町を放って逃げる選択なぞするものか!」
「そうでしょう?となると、選べる道は1つしか無いんですよ。彼を、死神代行として戦わせるしか。」
深く被った帽子から覗く瞳がルキアの瞳を射抜く。浦原の言っていることは尤もだと感じた。彼女は手に拳を作り浦原から視線を背ける。
「大丈夫だよルキア。一護、すごく強かったでしょう?」
「し、しかし…」
「本当にまずい時は私が助けるから。戦うよりも、主に治療面で、だけどね。」
「……分かった。」
ルキアは長い間を置いて大きく頷く。一護を死神代行として、この町を託すことを決めたらしい。彼女は浦原から渡された義骸に身を包んだ。
「彼奴が死なぬよう、そしてこの町を守れるよう私が一護の傍につく。」
「覚悟、決まったみたいっスね。学校の手続きはあたしに任せて下さい!ゆうりと同じ様にちょーっと道具を使えばチャチャッと片付くんで。制服は…まぁそれも何とかしましょう。」
「あぁ、ありがとう。」
「ルキア、今日は泊まって行きなよ!明日から一緒に学校行こう!」
「そこまで世話になるのは…」
「良いですよん、どの道どこかで休んだとしても朝一で制服諸々取りに来て貰わなきゃならないんスから。」
「だって。明日から楽しみだなー。まさかルキアと学生生活を送れるなんて!」
「…そうだな。私も少し楽しみだ。」
裏の無い笑顔で語る彼女を見てルキアはそれ以上何も言わず彼女に同調した。明日から始まる新たな学校生活に思いを馳せながら2人は同じ部屋に布団を敷いて眠るのだった。
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