第9章 現世編(後編)
キッパリと言い放たれた言葉にゆうりは笑う。着ていた外套のフードを再び被り直しルキアと並んで町を歩き浦原商店へ足を運んだ。夜も遅い時間だったが、店はまだ灯りが付いている。そして玄関の前には、いつもの姿で浦原が立っていた。
「おかえりなさい…っと、お困りの様ですねぇ朽木サン!あたしが力貸しましょうか?勿論、タダとは言いませんけど。」
「ほら見ろ、悪徳業者のような顔をしているではないか。」
「酷いなぁ、あたしも商売してるんですから勘弁して下さいよ。…その姿、まず必要なのは義骸みたいっスねぇ。死神の力、無くしちゃったんですか?」
「虚退治の際に深手を負った。周りにいる者を守る為には近くに居た黒崎一護という男に、死神の力を譲渡する以外に方法が無かったのだ。半分譲渡するつもりが…全て奪われてしまいこのザマだ。そもそも浦原、貴様があのような男が居ると先に言ってくれれば良かっただろう!」
「スミマセン、まさかこんな事になるなんて思ってなかったんですよ〜。代わりと言っちゃあなんですけど、義骸は差し上げます。」
「…何故準備されているんだ、私の義骸が。」
「ゆうりに作ってくれーって頼まれてたんですよ、朽木サンと出掛けたいからって。今持ってくるんで部屋で待ってて下さい。」
訝しげに視線を向けたルキアを躱し浦原は玄関を開けて2人を部屋に招いた。先にゆうりが、後からルキアが商店へ上がり居間のちゃぶ台周りに座る。ウルルやジン太、握菱は既に眠りについているらしく、とても静かだ。
「これで一緒に買い物したり出来るね。」
「いや、それが目的で義骸を使うわけでは…」
「いっそ私と一緒に高校行く!?一護も居るし!」
「何故そうなるのだ!」
両手を合わせ名案だとばかりに眼を輝かせたゆうりにルキアは首を横に振る。丁度そのタイミングで研究室に赴いていた浦原が顔を出した。手には勿論義骸が抱えられている。
「いい案じゃないスか!朽木サン、貴方黒崎サンに死神の力取られちゃったんでしょう?このままでは仕事なんて出来ませんし、彼に代理で戦ってもらうしか有りませんよ。」
「だ、代理だと!?そんな危険な真似、出来るわけないだろう!死神の力を手に入れたとはいえ、奴は人間だ。私の都合でそこまでやらせるわけにはいかぬ…。」