第9章 現世編(後編)
ゆうりは顎に手を添えあの日の事を思い返す。己が殺した死神は2人だったのに、何故3人殺された事になっているのかが分からない。まさか、あの後藍染が……。
「そういう事…だからこっちまで私を探す死神も居なかったのね。」
「ゆうり、私が隊長から聞いた話は本当なのか…?」
「…死神を殺したのか、という意味で聞いているのならそこに間違いは無いわ。でも誓って、殺したくて殺したんじゃないの。……現れた虚は、私に幻覚を見せた。元々戦ってくれていた3人の死神が私には虚に見えたの。気付いた頃には、もう遅かった。」
「幻覚を!?その虚は…」
「倒したわ。けれど私も深手を負ってしまって。このまま冬獅郎達が来ても私はただの同族殺しとして捕まってしまうかもしれない…そう思って現世に逃げたの。」
「そんな!真実を伝えれば逃げる必要など無かったのでは無いか!」
「信じてもらえる自信が無かったし、その時は部下を殺してしまって頭が酷く混乱していたから…。」
そもそも彼女に伝えた話自体が真実とは程遠い内容だった。しかし、藍染の裏切りによるものだとは話せない。嘘をつく事に胸が傷んだが、これは隠し通さなければならない真実だ。
「…尸魂界に戻るつもりは無いのか?ゆうりの身を案じて泣いていた者も、心配していた者も沢山居るのに…。」
「まだ戻るつもりは無いわ。今はこっちでずっと修行を続けていたの。二度とあんな事にならない様に…そして失ったもの全てを取り戻すためにね。ルキアは空座町に配属されたんでしょ?私は既に死んだとされているみたいだし虚退治の協力は出来ないけれど、いつでも困った時は頼りに来てよ!」
「た、頼りにって…今ゆうりはどこで何をしているのだ?」
「浦原商店ってお店でお世話になってるの。そこの店主が元死神でね…色々死神が使える道具だったり義骸も有るから。」
「そうか…。」
まだどこか釈然としないところが有るのかルキアは俯き気味に返事を返す。するとゆうりは彼女の両肩へ勢い良く両手を乗せた。
「義骸着たらさ、また一緒に甘味処行こうよ!」
「へ…?」
「こっちだとケーキとか美味しい食べ物いっぱい有るから。折角駐在任務に来たなら楽しまなきゃ損だもの。」
「し、しかし私は仕事で…」
「大丈夫、私も仕事で来た時お酒飲んだり好き勝手したわ!」