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【R18】月夜に咲く華【BLEACH】

第9章 現世編(後編)



名前を聞くとゆうりの肩がぴくりと揺れる。遂にこの街に己を明確に知る人物が来てしまった。本音は会いたい。けれど会えない。

「…そうなのね。元気だった?」

「目立って何か落ち込んでいる様子は有りませんでしたねぇ。とはいえボクも虚と戦闘している所を遠目に見ただけなので詳しくは分かりませんが…。」

「元気なら良かったわ。けれどルキアが配属されたのなら私も気軽に街を歩けないね…寧ろ学校なんて通って大丈夫かな。」

『問題無いよ。例え出会ってしまったとしても困る事などひとつも無い。かつて彼女は友人だったのだろう?何をそんなに不安になる事がある?』

「え……だ、だって…もしも私がこっちでのうのうと生きてるなんて知ったら…尸魂界に知られたら…私だけじゃなくて、喜助や夜一さん達にも迷惑が掛かっちゃう。」

声が震える。胡蝶蘭の言っている事は尤もだと思ったからこそ、己の言葉に自信が持てなかった。
ルキアが、尸魂界に生存報告をするわけが無い。そんな事をすればたちまち、捕縛をしに来るか最悪殺されるだろう。彼女はそんな事はしない。頭ではそう考えているのに、数多の裏切りの経験により心が会う事を拒絶する。
そんな彼女を知ってか知らずか、胡蝶蘭はゆうりの目の前に立ち白く柔らかな両頬を掌で包んだ。真っ直ぐで曇りのない瞳と視軸が絡む。

『安心するといい。朽木ルキアは裏切らない。ゆうりを売るような事は絶対にしない。辛い過去が有るからこそ彼女は人を慈しむ。』

「……そう、ね。そうだよね。海燕さんの元で仕事をしていた子だもの。」

『その通りだ。顔を合わせて来たらどうだい?上手く行けば尸魂界の内情も探れるかもしれないよ。』

「うん、行ってくる!蘭、刀に戻って。」

『…生憎僕は浦原喜助と話が有るんだ。1人で行っておいで。』

「そう?喧嘩しちゃ駄目だよ。」

ゆうりは義骸に身を包み地を蹴り地上へと飛び上がった。去って行く主の後ろ姿を胡蝶蘭は見詰め、その背中を浦原が帽子の下から観察する様に凝視した。背中を刺す殺気に似た視線に胡蝶蘭が振り返ると、浦原は訝しげに眉を顰める。

「…アナタ、本当に斬魄刀スか?主と別行動なんて考えられない。斬魄刀は刀だ。持ち主と離れた状態で具現化なんて不可能なんですよ。ゆうりはそれを知らない様ですが…何者スか。」
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