第26章 翡翠の誘惑
「そうだよな!」
オルオも激しく同意する。
「ねぇマヤ、マヤが書いたのを写させてくれない?」
ペトラが甘えた声を出してきた。
「俺も、俺も!」
「……丸写しは駄目よ」
マヤは頬に手を当てて少し考えてから、にっこりと笑った。
「一緒に書こうか!」
「あっ、そうだね。賛成!」
ペトラは手を叩いて喜んだ。
「じゃあ明日、朝食後に談話室に集まろうよ」
「OK!」
「サンキュー、マヤ! やっぱ兵長が惚れるだけあるよな!」
「えっ!」
とんでもないことを言い出すオルオにマヤは絶句した。
「そうだね! 執務はできるし友達想いだし、可愛いし?」
「飛ぶの速いしな!」
「馬鹿じゃないの? 飛ぶのは関係なくない?」
「あるんじゃねぇか? 兵長、必死こいて追いかけてたしよ…」
「それは好きだから追いかけてたんであって、速いから追いかけてたんじゃない…? あれ…? なんかよくわかんなくなった」
「どっちでもいいんじゃねぇか? とにかくマヤに惚れてるってことで…」
「そうだね~」
そう言って笑っているペトラとオルオに対して、マヤは顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「ちょっと、二人とも!」
テーブルをどんっと叩いて抗議する。
「そんな勝手なことを言わないで!」
「え~、別に今さら照れなくていいって。オルオだってデートのことは知ってるんだし」
「そうそう、それに俺、さっき兵長の心の声に命令されて眠くなった」
「は? 何言ってんの、オルオ…」
ペトラが馬鹿を見るような目をする。
「それそれ! 聞いてよ、ペトラ。一緒に紅茶を飲んでてね、もう一杯飲もうかってときに兵長が来たんだけど、オルオったら急に眠くなったから部屋に帰るって言って行っちゃったのよ?」
「え~、オルオって馬鹿なうえに突然眠くなるなんて、どうしようもないね」
辛辣なペトラに、オルオが言い返した。
「違うわ! 兵長がどっか行けって言うから、気を利かせて眠くなったんだよ!」
「そんなこと、兵長は言ってないよ?」
「言ってたんだよ、目が!」
オルオはそのときのリヴァイの鋭い眼光を思い出して、背すじがぞくりとした。