第26章 翡翠の誘惑
「それでね、ペトラに泊まりにおいでって言われてるんだ。そのときにオルオのおうちにも行っていい? ペトラがオルオのおうちは広いし、兄弟にも会ったらって言うんだけど…」
「おぉ~、来い来い! なんなら俺んちに泊まってもいいぞ。兄弟多いし部屋もベッドも結構あるしな! そうだ、夜によ… 怪談しねぇ?」
「あ~、それってペトラを怖がらせて、お布団に来てくれるの狙ってるんでしょう?」
「ばれた?」
オルオの頬が赤い。
「ばれるに決まってるでしょう!」
「いや、だってよ…。マヤが昨日ペトラと一緒のベッドで寝たって聞いたら…」
その先は、ごにょごにょと何を言っているかは聞き取れない。
「うらやましいんだ?」
マヤにしてはめずらしく、少しにやにやとした悪い笑みを浮かべた。
「……悪いかよ!」
「ううん、悪くないよ。あのね… オルオ、いいことを教えてあげるよ」
「な、なんだよ…」
「ペトラがね、オルオのことを見直したって言ってたよ!」
「マジ!?」
すでに赤くなっていたオルオの顔が、さらに耳や首すじまで真っ赤に染まる。
「あいつ、そんなこと… ひとことも言わなかったけど…!」
「それはやっぱり面と向かっては、恥ずかしいんじゃないかな?」
マヤはペトラがオルオのことを見直したと話したときの、真っ赤になっていた顔を思い出しながら。
「オルオが助けてくれたこと、ものすごく感謝してたよ」
「……そうか、そうかぁぁぁ! うぉぉぉぉ!」
オルオは両腕を真上に突き上げて咆哮した。
「なんだよっ! ペトラのやつ、素直じゃねぇよな!」
ついには立ち上がって小躍りしているオルオを、マヤは微笑ましく、そして可愛くすら感じる。
「やっぱ二杯目は俺がおごるわ!」
浮かれ気分で絶好調なオルオは、紅茶をおごると言い出した。
「えっ、いいよ。私がおごるって言ったんだし…」
「遠慮すんなって! 俺は今、最高に気分がいいんだ。おごらせろよ!」