第23章 17歳
“私は兵長とは、全然なんの関係もない”
………!
鋭い刃が心臓をえぐるような猛烈な痛みが走った。
なんだ、どうした。
先ほど自分でマヤは関係ねぇって思ったし、メラニーにもそう断言して倉庫から追い出したばかりだというのに。
なぜマヤ本人の口から聞くと、こうも胸に突き刺さるのか。
刃が刺さったままの傷口からどくどくと、鮮血が流れる。
そんなイメージに囚われて息ができない。
マヤを抱く腕に力を入れることも、抜くこともできないでいる。そして返事もできない。
“私は兵長とは、全然なんの関係もない”
それに対して “そのとおりだな” とも “そんなことはない” とも言えないでいる。
今、わかった。
俺とマヤは… マヤからすれば、全然なんの関係もないんだ。
だが俺からすれば、関係ないなんてこと…。
こんなにも翻弄されている。人類最強だなんて言われているが腕の中にいる、ひとまわりも下のマヤの言葉ひとつで。
どうすればいい。
どうすればこのまま永遠に、マヤを腕の中に閉じこめておける?
リヴァイが頭の中でそのような思考をぐるぐるとめぐらせていると。
「すみません。ご迷惑をおかけしちゃってますけど…。でも誤解なんだし、執務のお手伝いは今のまま、つづけてもいいですよね?」
「あぁ、もちろんだ」
「良かった…。やめろと言われたらどうしようかと思っちゃいました」
うつむいていたマヤは、ふいにリヴァイの顔を見上げた。
「でも言う訳ないですよね…。だって別に関係ないんだし。変な噂なんか気にしないで執務にしっかり励みますね」