第17章 壁外調査
馬繋場で二頭の手入れをしたリヴァイは、本部に向かう。
途中で偶然出くわしたエルドから、回収した遺体を滞りなく安置できたと報告を受ける。オルオたちに伝達を頼んでいたが再度エルドにも部屋割りや夜間の見張りの件を命じ、そこで別れかけたが呼び止められる。
「……兵長」
エルドは何か言いたげな様子だ。
「昨日俺、初めてまともに話したんですよね… マヤと。思ってたより話しやすくて、帰ったらみんなで飲みに行こうって言ってたんです」
「……そうか」
「はい。……俺、絶対行けると信じてますから。失礼します」
頭を下げ去っていくエルドの背を見ながら、リヴァイは行かせてやると強く思う。
……必ず。
本部に戻ると、エルヴィンに報告を上げる。事務的に、淡々と。
余計なことを何ひとつ口にしないエルヴィンに心の中で感謝する。
そのまま部屋に上がろうとしたが、鋭い声が飛んだ。
「まだ終わっていない」
仕方なくエルヴィンが座っている机の前まで戻った。一刻も早く二階に行きたいが、ここは我慢だ。
「捕獲の件の報告は?」
「……遺体の回収を終え村に向かっていたら、信煙弾が見えたからタゾロ、オルオ、ペトラを引き連れて急行した。現場にはハンジとマヤしかいなかった。マヤが巨人に掴まれ食われそうになっていて…」
生々しく情景がよみがえり、眉間にぐっと皺が寄る。
「俺が巨人の腕を斬り落とし、うなじも削いだ」
エルヴィンは顔色ひとつ変えずに、さらさらと万年筆で何やら書き留めながら訊く。
「何故、二人しかいなかった?」
「……知るか。どうせハンジが暴走したんだろうが。本人に聴取したらどうなんだ」
「それもそうだな」
にやりと笑ったエルヴィンは机上から顔を上げた。
「ハンジはまだ上にいる。ここに寄るように伝えてくれ」
「……了解」
リヴァイが出ていくとエルヴィンはしばらく音もなく閉められた扉を見つめていたが、すっと帳面に視線を落とした。