第17章 壁外調査
……でも…、あの兵長が…?
どうも信じられない。
しかし現に今、兵長の部屋でマヤが寝ている。事実は事実だ。受け入れなければ。
「……で、ハンジさん。マヤの方は? その… 兵長のことを…?」
ナナバの問いかけに、ハンジは再びマヤを見た。
「うーん、まだ… そういうんじゃないんじゃないかな?」
ハンジは思い出していた。
あの飲み会の席で、リヴァイの顔を見ながら泣いたマヤを。
……あれは…。あのときには… もう?
「そっか。まだそういうんじゃないか…。でも私、この子好きだし…」
ナナバは優しいまなざしを眠るマヤに向けながら。
「どうなるかわからないけど、温かく見守ってあげましょう、ハンジさん!」
ナナバも思い出していた。
あの夜の大浴場で、自分の気持ちがわからない、気になる人がいるかどうかわからないと泣きそうな顔をしていたマヤ。
……そっか…。あのとき、マヤの手のひらの湯に映っていたのは…。
マヤといつかしようと約束した恋ばなをする日は、意外と早いのかもしれないとナナバは微笑んだ。
「そうだね、見守っていこう! さぁ、そのためにもマヤを綺麗にしてあげて、気持ち良く目覚めてもらわないとね。ナナバ、タオルを絞ってくれ」
そう言いながら掛け布団をめくったハンジは、マヤの胸元を覆っている白いクラバットに気づいた。
「これ…、リヴァイの?」
手桶の水にタオルをつけて絞っていたナナバが、そばに来る。
「あぁ…。多分そうですね。兵長がいつも巻いてるやつ。なんでマヤの上に?」
クラバットがかけられたいきさつを知らない二人の頭には、大きな疑問符が浮かぶ。
「わかった!」
ハンジの目は輝いている。
「リヴァイも可愛いところがあるじゃないか!」
「何なに? ハンジさん?」
「ナナバ…。これはきっと “まじない” だよ!」