第17章 壁外調査
「は? 何を言ってるんだい?」
抗議するハンジを無視して、リヴァイはモブリットに訊く。
「俺の部屋は?」
「は、はい! ええっと…」
モブリットは幹部の部屋の割り当てが記されている最初の頁を見た。
「ここの二階の一番奥の左です」
「ちょっと待ってよ、リヴァイ!」
声を荒らげるハンジに一歩寄ると、冷たく言い放った。
「どけ」
「どかない」
一瞬マヤの顔に視線をやりながら、リヴァイは感情のない声でつづける。
「こいつは静かなところで安静にしなくちゃならねぇ。だから一人部屋を割り当てられている俺のところに連れていく」
「でも… そんなのおかしいじゃないか! マヤはリヴァイの班員でもないのに。一人部屋と言うなら… そうだ! ミケの部屋に…」
ハンジがミケの方に顔を向けたとき、リヴァイの静かな声が流れてきた。
「ハンジ。お前の意見は聞いてないし、この件に関してえらそうに言える立場じゃねぇよな。お前の勝手な暴走の結果がこれなんだから」
「その点は… 反省してる。大いに反省してる。でも…」
ハンジが何か言いかけたが、その先を聞くことは誰もできなかった。エルヴィンの張りのある声が響いたからだ。
「ハンジ、リヴァイに譲れ」
その声の有無を言わせぬ強さに下くちびるをくっと噛み、ハンジはマヤのかたわらから一歩離れた。
黙ってリヴァイはマヤに寄ると、右手を伸ばし青ざめた頬に軽く指を添えた。ほんの束の間そうしてマヤの顔を見下ろしていたが、ぐいっと横抱きにした。
首だけくるりとエルヴィンに向けると黙って数秒じっとその碧い目を見つめる。エルヴィンも無言でリヴァイの青灰色の瞳にうなずいてやると、すっと部屋を出ていった。