第17章 壁外調査
「恐らく脳しんとうだと思われますが…。呼吸や脈は弱いものの問題ないので、これで起きないならば…」
ユージーンは、“これ” と言いながら気付け薬の小瓶を掲げた。
「今できることは、待つだけです」
「そうか、ありがとう」
エルヴィンがユージーンをねぎらった直後、バタバタと足音がしてハンジが飛びこんできた。つづいてモブリットにミケ、ラドクリフも入ってくる。
ソファに寝かされているマヤを見るなりハンジは叫んだ。
「マヤの具合は!?」
エルヴィンがすっとユージーンを見やり、ユージーンはそれに応える。
「脳しんとうです。気付け薬が効かなかったので安静にして目覚めてくれるまで待つしか…」
暗い顔のユージーンにハンジは努めて明るく。
「ならマヤが起きたとき、ここじゃ駄目だ。むさ苦しい男どもばかりの部屋なんて」
くるりとモブリットの方へ振り向き、問う。
「部屋の割り当ては? モブリット、マヤはどこかわかるかい?」
「ええっと…」
モブリットは机に近づき、部屋の割り当てを記してある帳面を手に取る。ぱらぱらと頁をめくっていたが、止まった。
「東の三軒ならんだ家の一番右。玄関扉の左に出窓のある家… の二階になってます」
「わかった。じゃあ私が責任を持って連れていくよ」
ハンジが上半身をかがめマヤを抱きかかえようとしたとき、低い声がそれをはばんだ。
「必要ねぇ」
声の主に、すかさずハンジは反論した。
「リヴァイ、ここは本部で騒がしいし、かといって今回は負傷者がいなかったから病床を作ってない。ちゃんと静かな部屋で寝かせないと…」
「俺の部屋に連れていく」