第17章 壁外調査
村の入り口が見えてきた。
若干速度を落とし、見張りの兵に訊く。
「本部は?」
「中央の煙突のある大きな屋敷になります!」
その声をすでに後ろに聞きながら、一気に駆け抜ける。
「……あれか」
本部とおぼしき屋敷の前でオリオンからおりると、マヤを抱いたまま中へ駆けこんだ。
入ってすぐの広い居間にエルヴィンとラドクリフがいた。
俺を一目見るなりエルヴィンは、てきぱきと指示を出す。
「リヴァイ、マヤをここへ。ラドクリフ、ユージーンを呼んできてくれ」
「わかった」
ラドクリフはその図体に見合わない素早さで部屋を出ていった。
俺はエルヴィンに指示された大きなソファへ、マヤをそっと横たえた。
「ニファがミケとモブリットを慌てて呼びにきたが…」
独り言のようにつぶやいているエルヴィンに、どうしてハンジのクソ野郎を止めなかったと文句のひとつも言いたくなったが、恐らくはその場に居合わせていなかったのだろうし、居合わせていたところで巨人を目の前にして言うことをきく訳がねぇな、あのクソメガネの暴走野郎は! と思うと罵倒する気も失せた。
……ただ早く、今はマヤを診てやってくれ…。
ひたすらにそれだけの気持ちでソファに横たわる彼女を見下ろしながら待ちつづけた。
バン! と扉のひらく音がしてバタバタと足音が近づく。
「マヤは?」
「ここだ」
駆けこんできたユージーンは、俺の視線の先をとらえ即座にソファのかたわらに鞄を置いた。
「マヤ、わかるかい?」
声をかけながら、手慣れた様子で立体機動装置のベルトを緩めていく。苦しくないようにブラウスのボタンも外す。
マヤのやわらかそうな胸元が、否が応でも目に入ってしまう。
………!
マヤを少しでも楽にするため、診察のためと頭では理解していても、何故だか無性に腹立たしい。
「おい、これをかけてやってくれ」
俺は自身の胸元のクラバットを、しゅるると外した。