第17章 壁外調査
マヤに意識があれば後ろに乗せ俺の腰に手をまわさせるのだが、今はそうはいかない。
彼女を横抱きにしたままオリオンにまたがると、そのまま向かい合わせに抱き合うように身体をずらした。両腕を俺の首にまわさせ、頭を左肩に預けさせる。
次の動作は少し躊躇したが、そういう場合ではない。マヤの脚をひらいてオリオンにまたがらせた。
小柄なマヤは想像以上にすっぽりと俺の胸の中におさまり、手綱を握っても支障はなさそうだ。
「よし、行くぞ!」
オリオンに声をかける。振動によるマヤへの影響も最小限に抑えられそうだ。
すぐ斜め後ろを、ぴったりとアルテミスがついてきている。そしてさらに後方にはハンジ以下全員も。
……一刻も早くマヤを連れ帰り、衛生兵に診てもらわねぇと。
速度を上げようとしたとき、前方からヘラクレスに乗ったミケと、少し遅れて荷馬車を駆るモブリットがやってきた。荷台には捕獲網とケイジ。
「リヴァイ!」
ミケの野郎が驚いた顔で叫んだ。
……自慢の鼻は利かなかったか。どうやら俺は風下らしい。
ヤツは手綱を引き速度を落とすと、説明を求める顔をしている。
……そんな時間はねぇ!
黙って通り過ぎようとする俺に、さらに叫ぶ。
「マヤはどうした!?」
振り向きざまに吐き捨てた。
「ハンジに訊け!」
その後すぐにすれ違ったモブリットも、呆気にとられている。
とにかく今は、悠長に説明している暇などない。
急げ! 急げ! 急げ!
俺の心が伝わるのか命じてもいないのに、オリオンは全身全霊をささげて地を蹴った。