第17章 壁外調査
呼びかけに反応はない。すぐに呼吸と脈を確認する。脈の確認のためにマヤの左手首を持ち上げ人さし指中指薬指の三本で測ると、トク… トク…と弱いが確かに伝わる鼓動に心底ほっとする。
呼吸も浅く顔色も悪いが、マヤは生きている。
「マヤ~!!!」
けたたましいハンジの声が癪に障る。
「おい、クソメガネ。これはどういう状況だ?」
「ちょっと捕獲を試みた結果がこれというか…」
「あ? 捕獲は明日だろうが! それにモブリットやミケはどうした?」
「……もう来るころだと思うよ?」
しれっと答えるハンジに無性に苛立つ。
「……勝手に暴走しやがったんだな。お前が巨人の糞になりたいと言うなら俺は止めん。だが、部下を危険にさらすな!」
思わずハンジの胸ぐらを掴み、怒鳴りつけた。
「……巨人は排便しないよ? 消化器官がないからね」
……こいつは何を言っているんだ!?
「……チッ!」
こんなクソ巨人オタクにつきあっている暇はない。
俺はハンジの胸ぐらを突き放すと、マヤを抱きかかえた。
「すぐに村に帰るぞ。ペトラ!」
「はい!」
「マヤの馬を…」
お前が連れて帰れと命じかけたときにヒヒンと声がして、上がる蒸気の間からアルテミスが現れた。
心配そうに俺の腕の中でぐったりとしているマヤを見つめている。
「……お前…。今からこいつを村に連れ帰る。ついてこれるか?」
ヒヒンと短く鳴き、さっと少し離れたところで待機しているオリオンの方へ行く。
……アルテミス、お前は本当に聡い馬なんだな。
「ペトラ、すまねぇ。馬はいい。代わりにこれを運んでくれ」
マヤから外した立体機動装置を渡す。
「はい」
「では、全員至急帰還するぞ」
「「「了解です!」」」