第17章 壁外調査
「俺が殺る! 手を出すな!」
すぐさま後続の三人に命じると、疾走するオリオンの背に立ちながら両手でブレードを抜いた。
バランスを保ちながら、瞬時に状況を確認する。
マヤを掴んだ巨人は今や立ち上がっていた。その大きな口をぱっくりとひらくと今にもマヤを喉の奥に流しこもうとしている。
寸前まで叫んで抵抗していたマヤは、すでに意識がないのだろうか。目は閉じられ、人形のようにされるがままでいる。
……クソッ! 間に合ってくれ!
巨人の腹に狙いを定めアンカーを射出し、同時にガスを噴かしてオリオンの背から飛び立つ。
パシュゥゥゥッ!
巨人の指がぴくりと動くのが見える。
……マヤが食われる!
まだ意識があるなら少しでも抵抗しろ!
気づけば俺は叫んでいた。
「マヤ!!!」
オリオンの背から斜め上に稲妻のように飛びながら、その軌道上にある巨人の右腕を斬り落とした。
ザクッ!
そのまま上昇しながら振り向けば、巨人の腕はマヤを掴んだまま地上に落下した。
それを確認しワイヤーを巻き取ると、視線を眼下にある巨人の首すじへ向ける。
腕を斬られ無様な声を上げている巨人のうなじを目掛けて、そのまま高速回転斬りに入った。
キュルキュルキュルキュルキュルキュル、ザクッ!
肉を削ぐ感触がブレードを通じて両手に伝わってくる。
ドォォォォォォォォン!
急所を削がれ倒れた巨人を背にしながら地上に降り立った俺は、斬り落とした巨人の右腕の落下地点へ駆けつけた。
シュウゥゥゥゥ! シュウゥゥゥゥ!
巨人の腕は、すでに蒸発が始まっていた。
マヤは、かろうじてまだ形を保っている巨人の手のひらの中で意識を失っている。
それはまるで、ゆりかごの中の赤子のようだ。
「マヤ! ……マヤ!!」