第17章 壁外調査
頬を染めたマヤが、潤んだ瞳で俺を見上げてくる。
………!
ドクンと胸が跳ねた。
人によく言われる。無表情で何を考えているのかわからないと。
だが自分では結構顔に出ているのではないかと思っている。いや、実際に出ているかどうかは知らねぇが、心の中を知られたくはない。
跳ねた心臓のことなどマヤに気づかれたくはない。
だから視線を外したいのに揺らめく琥珀色の瞳に囚われて、ただ見つめ返すことしかできなかった。
絡む視線は加速度的に胸を苦しくさせ、握りしめた両手は熱くてどうにかなっちまいそうだ。
何故こんな風に肉体が反応しているかわからないが…、いやもしかしたら。
俺の祈りが通じたからか。
狂おしいほどの祈りが通じたとき… その奇跡に人は、こういう反応をするのかもしれない…。
さかのぼること半日。
兵站拠点のスペリオル村より数キロ離れた地点から、巨人遭遇を示す赤色の信煙弾が上がった。
遺体回収の任務を終え村への帰還途中だった俺の班は、信煙弾を確認したのち二手に分かれ、俺が率いるタゾロ、オルオにペトラは現場に急行した。
近づくにつれ、状況が見えてくる。
前のめりに倒れていた巨人が突如上半身を回転させたかと思うと、腕を伸ばして兵士を捕まえようとしていた。
……危ねぇ!
間一髪でその兵士は立体機動で空中に逃げた。
早く駆けつけないと間に合わないかもしれない。
握る手綱に自然と力が入る。
あと少しで臨戦態勢に入れる距離まで詰めたとき、悲鳴が響いた。
「きゃぁぁぁぁ!」
「マヤ!!!」
……この声はマヤとハンジ!
巨人が宙に逃げたマヤを掴んでいる。
……クソがっ!