第17章 壁外調査
マヤはゆっくりと、まぶたをひらいた。
そこにあったものは得体の知れない恐怖でもなんでもなく、自身をまっすぐと見つめている力強い眼の光。
リヴァイの背後で光を放っているランプの金色とは対照的に、その三白眼の青灰色の瞳は確かな決意とともに揺らめいていた。
視線を受け止め、
「……兵長…」
視線が絡み、
「……マヤ…」
互いに相手の名を口にするだけで、胸が苦しくなる。
「大丈夫か?」
その低い声は全く感情などないような声色なのに、マヤにはわかる。
リヴァイの優しさが。
たったひとことにこめられた想いは、恐怖に縛られていた心にゆっくりと、まるで乾いた岩に清らかな水がしみこむようにマヤの内側に広がっていった。
「はい…」
守られている。強くそう確信できて、マヤは思う。
いつまでも怖がっているだけではいけない… と。
「ありがとうございました」
リヴァイの眉間にわずかに皺が寄る。
「あの…、助けて… いただいて…」
「約束しただろ? 必ず俺が、お前を守ると」
「はい…」
……そうだった。
大事な部下のひとりだから、必ず守ると。
そんなことはわかっているのに、今もまだ強く握られている左手が熱くて溶けてしまいそうで。じっと見下ろしているまなざしが強くて。
また勘違いしそうになる。
……勘違いでもいいから、ずっとこのままでいたい。
頭の片隅に浮かんだ願いに、自分で自分が恥ずかしくなる。
リヴァイ兵長は助けた部下を心配してくれているだけ。
それなのにどうしても、今かたわらに寄り添ってくれていることに特別な意味があるのではないかと考えてしまうのは何故?
……きっとそれは、私の方に特別な意味があるから… なのでは…。