第17章 壁外調査
「ナナバさん、宿営準備… 大変そうですね」
マヤはナナバが出てきた屋敷を覗きこみながら言う。
「うん、でもこの村はあの広大な小麦畑で潤っていたみたいだね。家も多いし、家具も調度品も良いものだよ。おかげでテントを張ることもなく、全員気持ち良く屋根の下で休めそうだ。……雑魚寝にはなるけどね」
「そうですか」
とマヤが相槌を打つのと、ジョニーとダニエルが、
「やったぜ!」
と叫ぶのが同時だった。
「おや、君たちは雑魚寝が好きなのかい?」
怪訝そうな顔のナナバに、ジョニーが答える。
「いや、そうじゃないんですけど、俺ら下っ端のぺーぺーなんでテントで寝るのを覚悟してたから…」
ダニエルが補足した。
「やっぱ床で雑魚寝だとしても、家ん中の方がいいっすから!」
「そうだね。夜露とも無縁だしね」
「そそ! それっす!」
すっかりナナバと打ち解けたジョニーとダニエルは楽しそうに笑っている。
それを見てマヤは、大切な同じ班の後輩が大好きな先輩と親しくなれて嬉しく思った。
「ナナバさん、ここは特に立派なおうちですね?」
マヤが訊くと、ナナバもうなずいた。
「うん、中の様子からしても村長の家だったんじゃないかな」
「……なるほど。じゃあここが作戦本部と団長の休まれるところに…?」
「そうだね」
ナナバは二階を見上げながらつけ加えた。
「階上にも部屋が幾つかあったから、兵長や分隊長もみんなここで寝るだろうね」
「へぇ…。さすが村長のおうち。広そう!」
「だね。まぁ部屋の割り当ては私の仕事じゃないから、わからないけどね」