• テキストサイズ

【リヴァイ】比翼の鳥 初恋夢物語【進撃の巨人】

第16章 前夜は月夜の図書室で


壁外調査の前日に人目を避けるようになったのは、いつからだろうか。

死に直面する任務を前にして、異性に告白するという風習があると知ったのは、調査兵団に入団してしばらく経ってからだった。

最初は俺に言い寄ってくる者など、誰ひとりいなかった。

……あのクソメガネを除いては。

クソメガネにしても色恋沙汰で近寄ってきたのではなく、純粋に俺の強さに対しての感嘆と興味だった。

今でも容易に思い出すことができる。

はみ出し者の俺たち三人に屈託のない笑顔で話しかけてきた。

「ちょっといいかな? 見ていたよ、決定的瞬間!」

その笑みの裏に何かがあるのではないかと警戒する俺に、あいつはお構いなくまくし立てた。

「君が巨人を倒すところに決まってるじゃないか! ホント凄かった! 思わず滾ったよ!」

「……あぁ」

それから様々な出来事を経て兵士長に就任してからは、一体何がどうなってやがるのか次から次へと “告白” というものをされるようになった。

はじめは真面目に応対していたが、段々きりがねぇし、避けるようになった。

執務室や居室、訓練場、食堂に談話室は必ず誰かに捕まる。

街に出たこともあったが、街で出くわした場合は、相手が “こんなところでお会いできるなんて運命です” とかなんとか訳のわからねぇことをぬかしながら、兵舎にいるときよりも激しく気持ちをぶつけてくるので面倒だ。

だから俺は、人けのない場所を転々とするようになった。人と会う機会を減らせば “想い” なるものをぶつけられることもなく、相手をみだりに傷つけることもない。

夜にはここ、図書室の一番奥にあるソファで寝っ転がることが多くなった。

意外と穴場で、明かりを灯さなければ無人だと思うらしい。

鍵を内側からかけることも考えた。だが普段鍵のかかっていない図書室や資料室が施錠されていると、かえって中にひとがいると知らしめていることに気づいてやめた。

……だから今日も…、壁外調査前日である今夜も、俺はこのソファにいる。


/ 1869ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp