第16章 前夜は月夜の図書室で
滅多に味わえない肉はやはり美味しく、マヤはゆっくり楽しんだ。
付け合わせの粉ふき芋を頬張れば、そのほくほくとした食感がたまらない。
具だくさんの野菜のスープを一口すすると、身体の芯から温まった。
明るい食堂で人のさざめく気配を感じながら食事をしていると、一人であろうが全く淋しくない。
耳に入ってくる会話の断片も気になる話題の場合は、そっと耳を澄ましたりして。
ちょうど今は、かなり離れた位置に陣取っている新兵の女子グループの声。きゃあきゃあと女の子らしい高い声で騒いでいて、マヤは別に気にも留めていなかったのだが…。
「結局リヴァイ兵長さ~、見つからなかったね!」
聞こえてきた “リヴァイ兵長” に全身が耳になる。そのような感覚にマヤは襲われた。
「執務室も訓練場もいなかったし、ここと談話室も何度も覗いたけどダメだったわ」
「せっかく勇気を出してみようかと思ったのになぁ…」
「メラニー、部屋には行ってみた?」
「ううん」
「ちょっとさすがに私室にはいきなり行けなくない?」
「そうだよね。じゃあずっと部屋にいたか、街に出かけてたのかもね」
「このあと、部屋に行ってみる?」
「え~、無理!」
「みんなで行けば平気じゃない?」
「そうだね、四人で行けば怖くない!」
新兵の女子四人は、善は急げと立ち上がり慌ただしく出ていった。
彼女たちがいなくなった食堂は急に静かになった。
マヤは皿の上の粉ふき芋をじっと見ながら、今しがた聞いた新兵たちの会話を考えていた。
……今からあの子たち、兵長に告白するんだ…。
あ…、みんなが告白する訳じゃないか…。
メラニーって子だけ…?
なんだろう?
何?
胸がもやもやする。
……私には関係ないのに…。
マヤは胸に渦巻くわだかまった感情から目を逸らそうと、食事に意識を集中し直した。