第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
この言葉が効いたらしい。
「……確かにリヴァイの機嫌を損ねると面倒だな…。仕方がない、あきらめるか」
ハンジはあごに手を当てて、不承不承な様子である。
それを見たミケはあきれたように言い放った。
「そもそもペトラとマヤたちがいなくてハンジの元気がない謎を解明するのと、新薬の毒見は関係ないじゃないか」
「あはは、ばれたか。どさくさに紛れてちょっくら薬を飲んでくれたらラッキーかな~なんて思った私が甘かったようだね。よし、じゃあモブリット! 二人の代わりに今夜も頼むよ?」
「勘弁してくださいよ!」
結局いつもどおりに自分にお鉢がまわってきて頭を抱えるモブリットを、強引に引っ立てて食堂を出ていくハンジを見送ったあと。
「もう体は大丈夫なの?」
マヤはずっと気になっていたジョニーとダニエルの体調を気遣った。
「はい、もうすっかり!」「このとおり!」
ダニエルは腕まくりをして力こぶを見せつけている。
「そう、良かった。ひどい目に遭ったわね」
「ほんとっすよ。もうあのサビ婆さんときたら、スンスンひと嗅ぎで俺らのことなんでもかんでも言い当てて、おっかないのなんのって」
「まぁ!」
マヤは目を丸くする。ひどい目というのは毒ぶゆに刺されたことを言ったつもりなのに、ジョニーとダニエルの二人にとっては、治療してくれたミケの祖母で稀代の嗅ぎ師のサビの存在の方が、よっぽど恐ろしかったらしい。
だが…。
「でもサビさんの作った卵料理は全部美味しかったから、そう言うなよジョニー」
ダニエルの言葉にジョニーも笑顔になった。
「それはそうだな。あのオムレツを食いにまたあの山小屋に行ってもいいかも」
「ふふ、そうね。おひとりで暮らしてるんだもの。近くに行ったときは寄りましょう」
「「そうっすね!」」
マヤとジョニーとダニエルが、なごやかに会話をしている隣ではリヴァイ班たちが。
「はぁ…、終わったな全周遠征訓練…」
ため息をつくグンタにエルドが疑問顔だ。
「なんだ? 帰りたくなかったのか?」
「いや、そうじゃねぇけど…。また明日から地獄の基礎鍛錬かと思うとな」
オルオも同意した。
「馬に乗りすぎて腰がおかしくなっちまってるから、腕立て伏せや腹筋背筋スクワットの300回はきついっすね」