第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
その美しい揺らぎを見せる青灰色の光にとらわれると、胸がドキドキして苦しくなる。
今しがたハンジがマヤに与えた勇気とはまた違った、強い何かが身体の奥底から湧き上がってくる。
それは本能的に感じるリヴァイからの信頼、リヴァイへの想い。
どんな状況でもリヴァイさえそばにいてくれたならば、必ず道はひらけると信じられる心。
マヤはしっかりとリヴァイの瞳を見つめ返したのちに報告を始めた。
その立ち姿は先ほどとは打って変わって自信に満ちあふれている。
「巨人が来ると鳥がいなくなります。そのことに初めて気づいたのは新兵のときでした…」
マヤは今日馬上でタゾロに話したときと同じように、順を追って説明した。巨人が出現したときには必ず鳥が姿を消すことを。最初の気づきから同じ現象が何度もつづき、確信に変わったことを。
「……そして今日の奇行種です。ちょうどタゾロさんに巨人と鳥の関係性について話していたときに、飛んでいた鳥たちが一斉に急に進行方向を変えて去っていったのです」
「マジであれはすごかったです!」
そのときの状況が脳裏によみがえってきたタゾロは、たまらず口を挟んでしまう。
「鳥がいなくなった途端に黒の信煙弾が上がって、あの駿足の奇行種が駆け抜けていったんです。半信半疑だった俺も確信しました」
タゾロの確信したという言葉に、マヤは嬉しそうにうなずいた。
「なるほど。よくわかった」
ひととおり話を聞いたエルヴィンは、真っ先にハンジに意見を求めた。
「どうだ? ハンジ」
なぜか下を向いているハンジの肩は、ぷるぷると震えている。
「……マヤ…」
「はい」
「私は今、猛烈に感動している…!」
顔を上げたハンジの瞳は感涙で、うるうると煌めいていた。
「いまだかつて真剣に、巨人の動向を自発的に討究した人物が私以外にいただろうか! マヤ、君は私の見込んだとおりの素晴らしい人材だ!」
叫びながら突進し、マヤの首に抱きついている。
「ハンジさん…、く、苦しい… です…」