第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
いつ眠るのだろうか?
そんな状態で来たるべき壁外調査は大丈夫なのだろうか?
などと疑問は尽きないが、夜な夜なランプの明かりに照らされたハンジとモブリットの顔が輝きを増していくところを見ると、そんな心配は杞憂だということがわかるのであった。
そうして過ぎていく日々は、あっという間に壁外調査の前日を迎えた。
いつもどおりに午前の訓練を終えた調査兵たちは、そわそわと落ち着かない。
なぜならば “壁外調査の前日恒例” の午後からは自由の時間が待っているからだ。
死と隣り合わせの任務である壁外調査。
その前日に皆に与えられる、つかの間の休息ともいえる午後からの自由な時。
心の平安を保つために平常どおりに自主訓練に励む者、街に行き散財して重圧のストレスを発散する者、食堂にだらだらと居座りつづけてマーゴに呆れられる者、自室に引き籠って何をしているのか謎の者。
そしてもっともポピュラーな過ごし方である “想い人への告白”。
本来ならば一定数の兵士たちが、そわそわと気もそぞろに何も手につかない様子でいるはずなのだ。
それがどうだろう。
今回はそわそわウキウキの表情よりも、あきらめムードがいっぱいの残念顔が多く見受けられる。
「ねぇ、ヘルネに行ってお茶しない?」
「そうだね…。リヴァイ兵長はもうマヤさんのものだしね…」
「マヤさんのものかどうかなんて…、そんなの告ってみないとわからないんじゃない? 」
「おぉ~、強気だね」
「でもやっぱ街に出ようよ。前のときだって兵長は見つからなかったし。告白したところで十中八九無理の兵長を捜しまくって無駄な時間を過ごすより、カフェで新作のケーキでも食べてる方が絶対有意義だって!」
「それもそうだね」
前回の壁外調査の前日にリヴァイに告白をしようとしていた新兵の女子グループも、今回ばかりはさすがにあきらめたようだ。