第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
「リヴァイ、モブリットを許してやってくれ。誰にも何も言うなと命じたのは私だ」
ハンジは入室後すぐにリヴァイとモブリットのあいだに入った。
「わかった。それで明日は森に何がある?」
「いやぁ、まさかリヴァイがいるとは思わなかったよ。モブリットは申請書を机に置いたらすぐに帰ってくるはずだったのに帰ってこないから、もしかしたらと来てみたら…。てっきり君はマヤと一緒だと思ったのになぁ!」
リヴァイの質問は聞こえなかったのか、それとも聞こえないふりをしているのか、ハンジはぺらぺらと関係ないことをまくし立てたのちに。
「邪魔したね、リヴァイ。さぁモブリット帰ろうか」
「帰ろうか… じゃねぇ。お前もここに顔を出したからにはとっとと吐いてもらおうか。なぜ森へ行く必要がある?」
ハンジはじっとリヴァイの顔を数秒ものあいだ見つめた。
そしてごまかしきれないと判断したのか、仕方ないといった態で一瞬への字に口を曲げてみせてから話し始めた。
「白状するしかなさそうだね」
背後のモブリットにちらりと視線を投げれば、信頼に満ちた瞳のまま大きくうなずくのを確認してから。
「あまり大きな声で言えたものではないんだ。聞いたら忘れてくれないか」
「内容次第だな…。一体あの森に朝っぱらからなんの用がある?」
「今日訓練中に新兵が森の奥深くで墜落したんだ。ちょっとした体調不良でね…。すぐに回復したから問題はないんだが、落下した地点に問題が…、いや希望があったんだ」
「……希望?」
「あぁ。落ちた新兵を救出しに地面に下りた我々は目を疑ったよ、そこに広がっていた光景に…!」
ハンジは大きく手を広げて、あたかも今目の前にその景色を見ているかのようだ。
「なぁモブリット?」
「上を飛んでいる俺たちには枝や下草で見えないですからね。フォルンがめまいを起こして落ちなければ気づくことはなかった」
どうやら落下した新兵はフォルンという名前らしい。
「そうそう、あれはフォルンの手柄といってもいいね! どうだろう、フォルンに何か報奨金のようなものを出せないだろうか」
「……そうですね、アレが売り上げに直結するようになったら、その一部を…」
「おい」
リヴァイを無視して会話をしている二人の耳に、怒りを抑えている低い声が飛びこんできた。
